ナマステ。インドは首都デリー在住のアミターブです。
実は私、以前はインド北部のデラドゥンという街に住んでいたのですが、コロナにより日本に帰国。
現在はあらためてデリーで働き始めて2か月ちょっと。毎日楽しく暮らしています。
知人たちからは良くこんなことを聞かれます。
「なんでインドが好きなの?」
「これはなんですか?」
全ての質問にバチッ!と答えられたらいいのですが、いかんせん広大で多様性あふれるインド。
「インド」を主語にすると大きすぎて、「うへへ、ナンだろうねぇ…」としか言えなくなるのがいつものパターン。
とは言え、少しでもインドの魅力が伝わるよう、定期的に記事にしていこうかと思っています。
どうぞお付き合い下さいませ!
さて。インドと言えばチャイ。皆さんご存じ甘~いミルクティです。
道端の至る所にチャイスタンド(チャイの屋台)があり、1杯10ルピー(15円くらい)で熱々のチャイを飲むことができます。
今回は、そんなチャイスタンドでチャイを飲みながらぼんやり考えたことについて、つらつらとお届けします!
砂糖はたくさん入れると良い。
2か月前にあらためてインドに帰って来たとき、デリー空港に到着したのは夜遅く。そのままホテルに直行。
夜が明けると、なによりもまず久しぶりのインドを感じねばならぬと思い、朝の散歩がてらチャイスタンドを探しに出かけました。
ほどなく目についたのが、このお店。
ちょうど店主がチャイを作っているところだったので、さっそく1杯注文。
久しぶりのチャイは、眠い目がバキーンと開く程しっかり甘くて、旨い!
「インドに帰ってきた!!」という実感が湧いてきます。
初めてインドの道端でチャイを飲んだのは、7年ほど前のひとり旅の時。
ゴミゴミした雑踏の中で、どう見てもきったねぇ屋台でチャイを飲むなんて、最初はすごく勇気が必要でした。
出来るだけ人が多く集まっている屋台を選び、ドキドキしながら注文し、平然を装って熱々のチャイを受け取ります。
「ふん、こいつはインド初心者だな」と見透かすような周囲の視線。
恐る恐る口をつけ、バキーンと甘いチャイを飲み終える頃には、ひとつ壁をのりこえたような達成感と、「ああ、これからインド旅が始まるんだな」という覚悟が決まったような感覚がありました。
何かを始めるとき、一歩踏み出さないといけないとき、チャイが喝を入れてくれます。
生姜はグシャッと潰すと良い。
今回インドに渡航して最初のミッションは、自分が住む部屋を探すこと。
会社が出してくれるホテル滞在費用は2週間。その間での部屋探しは随分と骨が折れました。
不動産ブローカーに連れられてあちこち歩き回り、いくつも部屋を内見したものの、なかなかピンとこない。
日が落ちかかったこともあり、ブローカーに今日はもう終わりにしましょうと伝え、その場で解散。
グーグルマップで現在地を見ると、協力隊の時に滞在していたホテルの近くまで来ていました。
ホテル近くの、当時から気になっていたけれどタイミングが合わずにスルーしていたチャイスタンドを発見。今回こそは、と立ち寄ることに。
チャイを1杯、と注文すると、おじさんは表情一つ変えずムスッとした様子で生姜をグシャッと潰し、チャイを作ってくれました。
チャイはただ甘いだけではだめで、やっぱりピリッとショウガが聞いていなけりゃいけません。
美味しいよと伝えると、無愛想だった顔がほころび、はにかんだ様な笑顔を見せてくれました。
2年前。2020年1月1日。
僕はヨガの聖地リシケシュに観光に来ていました。
お正月だし初日の出でも見ようか、と早起きして外へ繰り出したものの、リシケシュはガンジス川沿いの、谷間にある街です。太陽は待てど暮らせど山の向こう。なかなか顔を出しません。
冷たい風に凍えながらベンチに座って待つこと1時間。とあるインド人男性がやってきて隣に座り、声を掛けてきました。
30代後半くらいの彼は、デリーで長く勤めていた仕事を辞め、今はインド中を旅してまわっているんだとか。
彼に、どれくらい旅を続けているの?と聞くと、
「人生は毎日が新しい。そうだろ。だから僕の旅は今日始まったばかりなんだよ。」
と言いました。
寒そうな僕を見かねた彼は、目の前の屋台に「チャイを2杯」と声を掛けます。
チャイ屋のおじさんは、ガンジス川の河原で拾ってきたであろう石で、生姜をグシャッと、勢いよく潰して鍋に放り込みました。
ピリッと生姜の効いたチャイを飲み終えた頃、ようやく初日の出。
ふたり並んで壮大な景色に見惚れた後、彼とはインスタを交換してお別れ。
それからというもの、彼は数か月間、一日に何度もリシケシュの様子を投稿していたので、よっぽど気に入ったんだなぁと思っていたけれど、最近はパッタリと更新が止まりました。
彼は今でも毎日新しい旅を続けているのだろうか。それとも自由な旅人であることをやめ、インスタを更新する暇もないほど忙しく働いているのだろうか。生姜が効いたチャイを飲む度に思い出します。
でも、つまらない日常があってこそ、なのかもしれないなぁ、なんてことを思いました。
チャイの調和に世界を見た。
知人の紹介で、ホームステイのような形で部屋を借りることが決まり、ひとまず落ち着くことができました。
部屋探しから解放されて時間ができたので、次はCovid-19のワクチンを打つことに。
アプリで予約をし、病院まではホストファーザーが車で送ってくれました。
ワクチン接種は、複雑な手続きも待ち時間もなく、驚くほどスムーズ。
その帰り道、ホストファーザーが「ワクチン1回目完了のパーティです!」と、チャイと煙草で一服することに。
ワクチン直後に煙草ってどうなんだろか…と逡巡したものの、まあええやろ、と思い甘えることに。
しばし待ってチャイを受け取り、近くの適当な段差に並んで腰掛け、煙草に火をつけます。
ホストファーザーは、数多いデリーのチャイスタンドの中でもこの店のチャイがお気に入りなんだそう。
小綺麗でお洒落なカフェは好きじゃなくて、こんな風に道端に座って飲むのが好きだ、とか、インドでは高級なものも安いものも、質が高いのも悪いのも、自分で選択することが出来る、だからお金持ちも貧乏人も同じ街に生きていられるんだ、とか。色々なことを話してくれました。
ホストファーザーおすすめのチャイは、牛乳の味、砂糖の甘さ、紅茶の香り、生姜の刺激、どれもがぴったりと、見事に調和していました。
道端のチャイスタンドでチャイを飲む時、とりわけそのチャイが美味しかった時、心底満ち足りた気分になります。
それは、外国人である僕をもその調和の中にどっぷり溶け込ませてしまう様な、インドの途方もない懐の深さを感じるから。
そして、僕も世界の巡り合わせの中に生きていることを実感できるから。
だから、僕はチャイを飲むのが好きなんだと、思いました。
チャイを飲むとき、そこには色々な出会いがあり、色々なことを思い出し、色々なことを考えます。
皆様も、インドにお越しの際は、是非。
おわり。
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