ナマステ! ネパール東部・フィッカル在住のchandraです
前回に引き続き、ネパールの教育の実情を紹介します。
今回とりあげるのはネパールの10年生が受験する統一試験、SEE(Secondary Education Examination)についてです。
SEEの試験を解説!
ネパールの学校の区分は
また、SEEの試験科目は
となっています。
英語
ネパールは英語教育に力を入れています。
ネパールの10年生は日本の中学3年生の年齢にあたるので、日本の高校入試の英語の試験をイメージしながら見てみてください。
まず、問題を含め、すべて英語で書かれています。
日本でもセンター試験に代わる共通テストでは英語の試験問題をすべて英語で記載することが計画されていますが、高校入試ではすべて英語で記載されてはいないと思います。
文章読解のリーディングに加え、後半ではライティングも出題されています。
上に示した問題では、第7問で、
「ある生徒が図書館の新しい利用証を得ようとしています。
生徒と司書とのやりとりを6つ以上書きなさい」
という問題が出題されています。
このように対話を構成する問題は、同じ年に他の州で実施された試験では
・最近映画を見た友人同士の会話
・新年をお祝いに関する友人同士の会話
・SEEに向けた準備に関する友人同士の会話
・日帰りの学校行事から戻り、旅行について振り返る、友人同士の会話
・SEEを終えた後の予定に関する友人同士の会話
・英語を学ぶ重要性に関する友人同士の会話
が出題されています。
また、上に示した問題では、第8問で、
「ネパールでの観光旅行というテーマで200word以内のエッセイを書きなさい」
という作文が出題されています。
他の州で課されたエッセイのテーマは、
・ネパールでの失業率(unemployment)
・環境汚染
・教育における新しい技術(modern technology)の利用
・あなたが最近読んだ本、または観た映画の感想
・読書の重要性
・自分が住む地域のward(地域内の自治区分)の首長に対して、地域の文化や遺産を保全することの重要性を訴える手紙
など、様々な分野のテーマが出題されています。
さらに、他の州ではこの年に
このようなデータの読み取りも出題されています。
数学・理科
英語の試験はすべて英語で、国語の試験はすべてネパール語で書かれています。
その他の科目を見てみると、
どの科目もネパール語と英語で書かれています!
これは、公立校の多くはネパール語、私立校の多くは英語で授業がなされることから、どちらの言語で授業を受けても対応できるためです。
数学と理科の問題を日本語に訳してみました。
数学は学ぶ学年が違いますが、日本と出題される形式は変わらないように感じます。
理科は、10年生までに計算をあまり教えないので概念や用語の説明が中心となっています。
SEEの結果
2018年度、正確にはネパールでの2075年度の試験結果をまとめてみました。
を参考に作成しました。
各州の比較
まず、州ごとに受験生の全科目の平均点から換算されたグレードを見てみます。
すでに州の名前がついているところもありますが、未だにNo.1など、名称が決まっていないところが多いため、全て数字で表しました。
No.3州の成績が良くなっていますが、No.3州には首都のカトマンズ、観光地として有名なポカラが含まれています。
そのため学校も多く、特に私立校では試験結果が生徒確保につながるため、競争意識が高くなっています。
前回の記事でも紹介しましたが、このSEEの試験は州ごとに問題が異なります。
そのため、厳密に州ごとの学力の比較はできません。
試験科目ごとの結果
まず、必修科目の結果です。
一際目立つのが数学で、追試の対象となるD、Eの割合が50%を超えています。
数学に限らず、SEEでは教科書や問題集に掲載されている問題がそのまま出題されることが多々あります。
古くから暗記が中心となる教育が行われ、今でも数学では自分で解かず、板書をそのまま写すだけの授業も見られます。
一方で、試験では答えだけでなく記述が求められるため、暗記では対応できないことが結果に表れています。
次に、選択科目の結果です。
選択①、選択②ともに受験者数の多い6科目の結果を載せました。
英語で州ごとに出題される問題の違いを見てみましたが、選択科目として選んだ科目により、難易度が異なります。
平均点も違うのですが、得点調整はなされません。
選択科目の数学や理科は必修科目と異なる内容で、教科書も異なります。
平均GPAが高くなっていますが、10年生としては難しい内容です。
これらの科目は理系専攻の生徒のみしか受験しません。
校種による結果の比較
最後に、公立校と私立校の結果を比較してみます。
左のグラフでは公立校、私立校、それぞれ校種ごとのグレードの割合を示しています。
右のグラフは同じデータもとに、グレードごとに校種を比較してみたグラフです。
この結果からも、私立校の成績が上位に位置していることがわかります。
これまでネパールの教育事情について紹介してきましたが、
日本もネパールも教育内容、教育方法、試験内容など常に変わり続けています!
以上、ネパールの教育事情についてchandraがお伝えしました!
コメント